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ワインに関する本は洋書も含めると膨大ですが、お薦めの本をご紹介します。


和食とワイン

出版社

日本ソムリエ協会

出版日

2015/7

著者

田崎真也、高橋拓児

価格

3,300円+税

アマゾン扱いないので、こちらから日本ソムリエ協会で直接購入してください

ひとことで言うと、非常に勉強になる本です。

ソムリエ協会の機関誌である「Sommelier」で4回にわたって連載した「日本料理とワインを検証する」をベースに和食及び日本酒を詳しく分析しています。

「和食とはなにか?」「和食と他の料理との違い何か?」ということを整理することもできますし、さらに進んで、合わせにくいものをどう合わせていくかという工夫のヒントなども得られる内容です。基本的にプロ向けのかなり専門的な内容で、和食の知識、素材の知識、ワインの知識など総合的な知識が得られる本です。

田崎さんらしい切口の鋭さは日ごろの疑問点を気持ちよく解説してくれ、和食の名店、京都の「木の婦」の三代目である高橋さんとの対談形式では、料理とワインを合わせる時のポイントなど、多くのヒントや発見が得られます。

料理を作る上でも参考になる本だと思います。


ボトルの中には夢がある

出版社

木楽舎

出版日

2015/2

著者

中川誠一郎

価格

1,500円+税

アマゾンで購入できます

著者は、アメリカ・ワインの輸入元として有名な中川プランニングの社長、中川誠一郎氏。父親の時代からカリフォルニアワインを輸入して業界では有名な存在です。しかし、氏は、この著書の中で、単に父親の事業を継承しただけではなく、彼の時代になってから、仲介業者を通さずに、ワイナリーに何度も足を運ぶことで、ワイナリーとの信頼関係を築き、直接取引をおこなうことが可能となった、と自負します。確かに、そのことでインポーターとしての存在感、より深い情報へのアクセス、いいワインを日本に紹介できる、ということにつながってきたのでしょう。

この本は、一言でいうと、カリフォルニアの有名生産者(もちろん、すべて中川の輸入ワイナリーです)のプロフィールが紹介された本です。中川氏が直接、プライベートに話をする中でざっくばらんな物言いで、綴られています。カリフォルニアの生産者は、フランスよりもはっきりと自分の意見を述べますし、読み物としても、なかなか面白かったりします。

特にマーク・オーベールについては、ワイナリーの紹介ページと同時に、後ろの方にインタビューがあり、かなりの紙面がさかれています。ヘレン・ターリーとの出会いや、ワイン造り、IPOBといった流行の考え方についての意見など、興味深く読めます。

一概にワイナリー経営で成功するといっても、入り方もまちまち、成功への道筋も様々、中には途中で挫折したり破たんした人がいるからこその成功という側面も考えてしまいますね。


ワインの瓶熟

出版社

コスミック出版

出版日

2014/1

著者

井出 甫

価格

1,800円+税

アマゾンで購入できます

前回、ご紹介したカーミット・リンチはワイン商がワインとの出会い、そしてそこで知り合った造り手との交流に関する本でした。今回ご紹介するのは、オーナーソムリエ(厳密にいえば、現在 ソムリエは退いています)。日本料理+ワインの先駆けともいえる存在でしょう。実はわたしもよく通っていましたので、著者の井出さんとは知り合いです。

題名は、「瓶熟」ですが、面白いのは、著者がソムリエとして行ってきたこと、素人だった著者が、試飲能力を磨くためにおこなってきたやり方、ワインサービスの仕方、などなど、決して上から目線ではないやり方ででお客様に提案する方法など、サービスマンシップの何たるかを提示してくれるところ。

そしてその先に、経験上「ワインの瓶熟」というテーマ・疑問にたどり着いた、というところでしょうか。

その「瓶熟」については、フランスの名だたるシェフ・ド・カーブ、オーナー、ワインメーカーなどにインタビューを行っていますが、結局、人によって意見が違い、また実験的なデータの裏付けはないことから結論には至っていませんが、そのテーマに絞って、インタビューを行っているので、造り手もかなり考えている様子がうかがえます。

期待以上に(失礼!)面白いので、ぜひ、読んでみてください。


最高のワインを買い付ける-フランスの伝説的醸造家を訪ねる旅

出版社

白水社

出版日

2013/12

著者/訳者

カーミット・リンチ/立花峰夫・立花洋太

価格

2,600円+税

アマゾンで購入できます

「ほとんどすべてのワイン本は、専門家の手によるものである。情報伝達あるいは教育を主目的としているため、審美的な喜びはほとんど感じられない。カーミット・リンチもまた専門家には違いないが、彼の著書には大いなる喜びがある。これほど楽しく読んだワイン本は他にない」

訳者あとがきに引用された作家のロアルド・ダール氏の言葉です。まさにそのとおり、と訳者も書いているように、私も引き込まれるように楽しく読みました。

カーミット・リンチという人物は、アメリカのワイン・ショップを経営する人物。その店で出すためにフランス全土を回って得た知識、会った人物、ワインについての紀行文というのが、この本の基本的なスタンスです。時代は1970年代から1980年代。頑固で個性的なフランスの醸造家やネゴシアンなどとの交流を紹介していますが、その強烈な個性と審美眼が随所に感じられ、とにかく面白い本です。この手のたぐいの本でこれほど面白い本は確かに他にないかもしれません。

あまり、この本の魅力をうまく伝えられないので、とりあえず、一読されてみることをオススメします。


新・日本のワイン

出版社

早川書房

出版日

2013/7

著者

山本博

価格

2100円+税

アマゾンで購入できます

こ最近、日本のワインの話題が、以前に比べて多くなってきています。先日、 デカンター・アジア・ワールド・アウォードで、グレースのグリ・ド・甲 州がはじめて金賞を受賞したという話題を取りあげました。

「日本ワインを愛する会」というのがあるのをご存知でしょうか。 山本博先生が会長で、15年前から活動しているそうです。「日本のワイン」 という本を10年前に書かれていまして、その改定版が今年7月に出ていました。10年前の「日本のワイン」も力作でしたが、そこにアップデートなワイナリー情報や業界の動きを追加し、2013年までの情報がよくまとめら れています。

ワインの歴史や創設者のプロフィールなどは、もちろん第一版と同じです が、ここ10年で日本のブティック・ワイナリーと呼べそうな生産者の数は 飛躍的に伸びていて、丁寧かつ真摯に、その状況が書かれています。カバ ーするワイナリーの数は、数えてみたら80社以上にのぼりました。

10年間で評価が著しく上がったワイナリー、下がっているワイナリーなど もありますが、割と淡々と書いてあるところに好感がもてます。

10年前にはなかったワイナリーもあります。わたしが以前、ご紹介したか もしれませんが、愛知県の豊田市に2006年にできた「アズッカ・エ・アズ ッコ」というワイナリーがあります。愛知県ではこのひとつしかなようで す。友人が愛知出身なので、飲ませてもらったのですが、シャルドネが素 晴らしく、ちょっと他のも飲んでみたいですが、叶っていません。量をた くさんは造っていないので、他のワインも発注しようと思ったら、すでに 売り切れていましたね。

すごい畑のすごい土

出版社

幻冬舎新書

出版日

2013/5

著者

杉山修一

価格

780円

アマゾンで購入できます

この本は、りんご園の畑の自然農法の成功例をきっかけに、動植物の生態系、微生物の役割、競争原理の働き、予測できない現象による可能性、さらには生物学における学問的対立など、多様な話題を初心者にもわかりやすくわかりやすくまとめていて、とてもいい本です。

まず、話は、農薬を一切使用しないでリンゴを生産するリンゴ園についての紹介から始まります。リンゴというのは、農薬ゼロで作ることは不可能とされていて、世界でも例をみない(!)というのは驚きです。そこで、このリンゴ園は「奇跡のリンゴ園」と紹介されています。

オーナーの木村さんという人は、徐々に農薬の量を減らし、年に1回まで減らしたところで、「ならば0回でもいけるんじゃないか」と思ったそうなのですが、1回と0回では大違い、ということで、それから8年間は収穫ができなかったといいます。この「1回と0回は大違い」というところについては、ブドウ栽培においても「農薬をできるだけ使わない、減農薬栽培(リュット・レゾネ)」というものが存在しているので最も興味のあるところ。

その答えは・・・ぜひ、読んでみてください。しかし、そこから発展した生態系全体の話やダーウィンの進化論との 絡みなどいろんな要素を知ることができて、こっちの方が面白いですが。

1001 wines You must taste before you die

出版社

ユニバース

出版日

2008年

著者

ニール・ベケット

価格

3,653円

アマゾンで購入できます

この表題、「死ぬ前に飲んでおくべき1001の・・・・」シリーズです。

わざわざ、アメリカ出張の際に購入し、重い思いをしながら日本に持ち帰ってきました。なにしろ厚さ6センチのハードカバーで2キロ以上あります。妻に見せるそうそう、「アマゾンで買えばよかったのに」とダメ出しをくらいました。アマゾンで3,653円ですから、そっちのほうが楽でした。ちなみにアマゾンには、この書物のキンドル化をリクエストすることができます(かなえられるかは別ですが)。そう、こんな本こそキンドル化してしかるべき本です。

スパークリングが約100種類、白ワインが約300種類、赤が600種類という分類で、地域はランダムにアルファベット順に並んでいます。 スパークは、そのほとんどがシャンパンです。それぞれのワインについて、ページ半分、または1ページをさいて解説を行い、整然と並んでいるので、辞書替わりに使う、眺めて楽しむ本です。

著者は、イギリス人で「Quarterly Review」というサイトでワイン評論を行っているニール・ベケット。実際には彼のチームで編纂したようですね。それぞれのワイン、ワイナリーについて簡潔に書いてありますが、なにしろ重いので、キンドル化したら、オススメしたい本です。

Nose

出版社

セント・マーティンズ・プレス

出版日

2013年3月

著者

ジェームズ・コナウェイ

定価

25ドル

アマゾンで購入できます

わたくしどもが翻訳したNAPA(邦題:カリフォルニアワイン物語ナパ)の著 者であるジェームズ・コナウェイ最新作が、このNOSEです。

先日、布袋ワインの社長のビル・キャンベルとシャトー・モンテリーナのブライアンが「あれ は面白い」と2人声をあわせるように言っていたので、即、買いました。

これは面白い本です。NAPAのようにドキュメンタリーかと思いきや、小説 です。物語は、アメリカ中にその名を知られたワインテイスターが、ある日、 試飲した「超」偉大な匿名ワイン、その匿名ワインの正体を暴くために奔走す るそのワインテイスターと妻、そこに絡み合う人間模様などを中心に進んでい きます。使われている英語は予想通り、難しい単語が並んでいますが、ストー リー展開には最初から引き込まれていきます。

カリフォルニアワインに精通す る作家が書いていますので、カリフォルニアワインの事を知らないと面白さは 多少下がるかもしれませんが、それにもかかわらず、はっきり言って笑えます。 冒頭から、パーカーもどきのワインテイスターの「パートナー」が登場します が、これが何と人間ではない!というところで大笑いです。人間模様の描き方 はコナウェイならではのシリアスで微妙な描写なので、奇想天外なストーリー 展開との対比をなしていて、極めて小気味よい本です。日本語版は・・・誰か に翻訳してもらいたいですね。結構、英語が難しいです。

この本の出版日は、2013年3月です。でたばかり。あまりに世界的有名なあのワイン評論家から、 クレームがつかないか、心配です。コナウェイは、私どもが訳した「NAPA」の続編を だしましたが、ナパのヴィントナーズに辛辣だったため、総スカンを食いました。今回はドキュメンタリーではなく、あくまで小説ですが、これほど似ているということになれば、あの評論家から何か言われそうな気がします。

仕事ができる人はなぜワインにはまるのか?

出版社

幻冬舎新書

出版日

2012年8月

著者

猪瀬 聖

定価

780円(税別)

仕事ができる人はなぜワインにはまるのか?

タイトルのつけかたは、幻冬舎流。その思惑どおり、ちょっと気になってしまう本であります。

仕事ができるからワインにはまるのか? この本の中では主として成功した起業家ビジネスマンへのインタビューを通して考察されています。 ですから、一介のサラリーマンレベルの話ではありません。とはいえ、 有名ビジネスマンのワインを通じたエピソードなどは、いいワインネタ(薀蓄まではいきませんが)になることは確かです。

しかしだからといって、ワインにはまりさえすれば、仕事ができるようになるという逆のパターンは真実ではありません。 しかし、ワインを通じて仕事が大きく前進する、人脈が広がる、というレベルまで落とせば、これは真実で、私も日頃、 感じていることです。特に外国人とつきあう上で、ワインを知っていると尊敬されますし、ワインを選ぶ上で重宝されますし 一緒に食事する上でも話題に困ることがありません。

ワイン学校に通ってくる男性というのは、今でこそ、そこそこいますが、昔は非常に少なく、そこで知り合った人たちは、だいたいは 「できるビジネスマン」もしくは「できるビジネスマン予備軍」の方々でした。年配の方は、すでに社会的地位を確立した人もいて、 ワインを飲みながらいろいろなことを教えてもらう貴重な機会もえました。

その辺のところも広く浅く網羅しながら、「ワインは難しいから・・・」と敬遠しがちな世の男どもにワインを飲むきっかけ(口実)を 与えてくれるのがこの本のミソ。実践編ではレストランでの作法や決まりなどが紹介されていて、ワイン初心者にやさしい本です。

[Fine Wine]シャンパン

出版社

ガイアブックス

出版日

2009年

著者/訳者

マイケル・エドワーズ/山本博(監修)

定価

3,400円(税別)

[Fine Wine]シャンパン

シャンパンの作り手に焦点を当てた本です。この本は、「FINE WINE」シリーズの一貫として出版されていて、姉妹本には「トスカーナ」や 「カリフォルニア」があります。まだそちらは読んだことがないですが・・・。

マイケル・エドワーズというのは、イギリスのワイン・ジャーナリストであり、1990年代はじめに、「シャンパーニュ・コンパニオン」という 本もだしているシャンパンの専門家。前書きによると、当時、シャンパンの作り手として小規模生産者(レコルタン・マニュピュラン) らを訪問する価値が本当にあるのかと、自問したこともあったそうだ。今では時代が変わり、それらの小規模生産者の個性がシャンパンに おいても大いなる存在感をもって世界中を席巻している。

たしかに言われてみれば(といってもさほど経験があるわけではないが)、こういう生産者の個性に焦点をあてたワイン本というのは、ブルゴーニュやボルドー、カリフォルニアと 言った地域ものでは、よくみかけるがシャンパンにおいてはあまりない。わたしがこれまで参考にしてきたシャンパンの本は、トム・スティーヴンスン の「世界スパークリングおよびシャンパン大全」というもので、個別の生産者についての詳しい紹介は、大手メゾンが中心だった。小規模生産者 については、簡単なプロフィールとレーティングのみ、という扱いだった。

それはさておき、この本は面白い。シャンパンは、基本的にシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエのブレンドであり、さらにノンヴィンテージが基本 であることはご存知の通り。しかし、それらの詳細はほとんど外部からは知る由もない。ワインというのは美味しければよく、そんなことを知る必要もない のだが、それでも飲み進んでいくと、知りたくなってくるもの。有名メゾンものはそのスタイルというのは確固としているから 比較的簡単だが、レコルンタン・マニュピュランというのは、そうはいかない。土地の個性や作り手の個性ということがわかってくれば、さらに シャンパンを選ぶ際の道しるべともなる。

魅力的でわかりやすい文章で、読んでいてシャンパンが飲みたくなる本である。

世界の野菜を旅する

出版社

講談社現代新書

出版日

2010年6月

著者

玉村豊男

定価

760円(税別)

世界の野菜を旅する (講談社現代新書)

野菜の視点から文化を語る非常に面白い本です。世界中を旅する著者が、その場所場所で出会った野菜の調理法、栽培方法など 日本で現状目にしているものとは違うものがあるという発見、そしてまた、それがどんな歴史的な変遷をたどってきたのか、など 文化論的な視点からも面白く読み進められます。

まず、最初に登場するキャベツのエピソードも知らないことばかり。キャベツというと胃腸にいい、ぐらいの薀蓄しかないわたしも、 その10倍ぐらいの知識を得た気がします。その他、じゃがいも、とうがらし、ナス、さといも、テンサイと章をたてて、それぞれの野菜の文化史と旅行記を巧みに融合させて文章がすすみます。

著者は、今ではワイナリーも経営されている玉村豊男氏。評論家であり、画家であり、今では、長野で、野菜を栽培し、ワインを造り、レストランを経営されています。評論家として世界中を旅してきた長年の経験がこの本にも詰まっていて、あたかも自分が旅行に行き、その場で野菜を食しているかのような自然な引き込まれ方もまたいいのです。

ワインだけではない、薀蓄ネタとしても使えますね。(教養、といってもいいでしょう)。

シャンパン 泡の科学

出版社

白水社

出版日

2007年9月

著者・訳者

ジェラール・リジェ・ベレール/立花峰夫

定価

1,900円(税別)

アマゾンで購入できます(ここをクリック)

フランスのシャンパーニュ地方の修道士、ドン・ペリニョン司教が発泡性のワインを発見した・・・。というふうに、一般に語られるものの、事実は若干、異なるようです。

泡というのはいろんな段階があるもので、発酵過程で、微発泡するのは当然であり、実際、今でも若い白ワインでは微発泡しているかと思われるワインに出会ったりします。 さて、ドン・ペリニョンが生きた時代、泡ができてしまうのは、ワイン醸造の技術が下手なため、とされ、当初ドン・ペリニョンはその泡の撲滅のために研究を進めていたというのです。しかし、退廃的な文化がヨーロッパを席巻し、特にイギリスでは泡がはやり始める・・・そして、ついに泡を撲滅するのではなく、泡を生かす、という方向に180度方向転換した結果、現在のシャンパンが誕生することとなった、というのです。彼は、偶然にそれを見つけた、という発見者ではなく、その泡をうまく味わいに活かし、コントロールし、実用化させた改革者であったわけです。

そういう歴史的な話から始まりますが、実はこの本はそのタイトルどおり、「泡の科学」ということに焦点をあわせて書かれています。泡はどうしておきるのか・・・・結論をここで述べるととてもロマンチックではないので、割愛します。

さらにシャンパンの泡とビールの泡の違い、シャンパンの音、五感に与える影響など、科学的アプローチで考察されていて、やはりロマンチックではありませんが、そういう捉え方を知るのも面白い。

著者は、シャンパーニュ地方の中心都市であるランスにあるランス大学数理学助教授であり、モエ・シャンドン社の研究部門の顧問を務めています。彼は大学で流体物理学を専攻し、そこで発想を得て研究対象をシャンパンに絞り、モエ・シャンドン社にアプローチして、研究体制を勝ち取ったというバイタリティある人物です。

泡ができる過程を研究し、そしてそれを解明し、よりよい味わいを生み出す・・・。そういう循環の一部からこの本は生まれています。専門書と思いきや、そこそこわかりやすく、さほど難しい物理学や化学の知識など必要ないので、私のような文系人間にも十分楽しめました。

ちょっと、気晴らしに、読んで損はない本です。

ワインと戦争

出版社

飛鳥新社

出版日

2003年11月

著者・訳者

ドン&ペティ・クラドストラップ/村松潔

定価

2,800円(税別)

アマゾンで購入できます

第二次大戦中、ドイツ軍の占領下におかれたフランス。ボルドー、シャンパーニュ、アルザス、ブルゴーニュ、各地でワインの没収・徴収が起こり、それに対して、どうフランス人が抵抗したのか、という史実を、多くのフランス人たちの証言を集めて書かれた事実。フランス人にとって、ワインが単なる飲み物以上である、ということが、この本を読むと、よくわかります。

物語は、シャンパーニュ出身の若き軍曹であるベルナール・ド・ノナンクールが、ヒトラーの別荘に隠された、略奪された多くの偉大なワインが眠るワインセラーを発見するところから始まります。当初、英語の原書で読み始め、あまりにドラマティックな展開に、これは小説かな?と思いながら読み進めていましたが、紛れもない事実でした。対独レジスタンスに参加して、ゲシュタポに追われたブルゴーニュのモーリス・ドルーアン。ドイツ軍の捕虜となって収容所で5年間を過ごした、アルザスの有名生産者ガストン・ユエ。ユダヤ人をシャトー・パルメにかくまっていたミエール家・・・。そのエピソードのひとつひとつが衝撃的で、ドラマティックです。

ドイツ軍は、兵士を鼓舞するためにワインを飲ませるのですが、一人なんと一日1リットルあたりのワインをあてがうわけです。一本以上・・・それはちょっと多すぎないかと思いますが、そうだったようです。そのワインはフランスから調達するわけですが、レジスタンス側は、大量のワインをハンガリーやエジプトに送れ、という指示をもって、次なるドイツの侵攻先を知り、それをイギリス側に伝えるなど、生々しい戦争を身近に感じます。

ドイツ軍は各名醸地のワインを徴収し、ダメージを与えましたが、中でも一番ひどかったのは、シャンパーニュでした。ドイツ人は、今も昔もシャンパンが大好きです。2010年度のシャンパンの最大の輸出先はイギリスですが、続いてアメリカ、そしてドイツ。イギリスと違い、ドイツでは、自国でワインもスパークも造っているわけで、それを考えるとシャンパンの消費量も半端ではありません。ちなみに日本は輸入量の半分ですが、ドイツよりも人口は1.3倍ほど多いわけです。

こんなエピソードもあります。

ドイツがフランスを締め上げるには、食とワインを制限すればいい、ということで厳しい配給制をしき、とりわけ、生産性の低い老人や病人に対して、ワインと食料を制限します。その時、フランス側が抗議したのは、「ワインほど、ミネラルや栄養分を含み、消化にやさしい病人食はない、実際、多くの入院患者は、重病になると、日に2杯のワインを与えられる」という行にも感心しました。

また、ドイツはワインを徴収するため、「ワイン総統」なるものを各地に派遣するわけですが、その任にあたったのは多くがワインをよく知るドイツ側のワイン商でした。彼らは、ワインがフランス人にとってどんなものであるかを理解し、また、高級ワインに対する愛着ももっていた人物であり、そして何より、戦争が終わった後、自分が商売をする相手であるとも理解していたわけで、戦争を繰り返してきた歴史をもつ民族のしたたかさをも感じさせてくれます。

様々なエピソード、そして様々なシチュエーションが実際の取材と証言によって積み重ねられて、読み応えがあります。ワインがフランス人にとってどういう存在だったのか。そして、ドイツ人にとって、そしてヒトラーにとって、どういう存在であったのか、ということを理解できるとともに、われわれ、日本人にとっての「ワイン」とは何か、ということも考えさせられる内容です。米?・・・ちょっと物足りない気がします。われわれに守るべき伝統はあるのか、そして守っていこうという気概があるのか、ということも考えさせられるわけです。

ぜひ、ご一読をオススメします。

カッパドキア・ワイン―銘醸地ブルゴーニュ誕生秘話

出版社

彩流社

出版日

2008年3月

著者

薗田 嘉寛

定価

2,000円(税別)

アマゾンで購入できます

時代は十字軍の時代の1200年代を舞台に、ブルゴーニュにトルコ(カッパドキア)からブドウの樹を持ち帰る騎士たちを物語。第18回「日本ファンタジーノベル大賞」(2006年)最終候補作品。

史実にもとづいている、ということですが、どこまでが史実で、どこまでが作り話なのか・・・ヨーロッパの歴史の知識があまりない私にとっては、なかなか難しい。そこで「フランスワイン文化史全書/ぶどう畑とワインの歴史」という本を開いてみましたが、ワインの歴史を身につけるのは、一朝一夕には無理・・・と諦めました。しかし、そんな歴史的背景を知らなくても、実は楽しめる読み物です。

登場人物は、すべてワインにちなんだ名前がつけられています。ロマネ、モンラッシュ、ペペ、エスト・・・。悪役には、フィロキセラといった具合です。なにげない登場人物もすべてワインや酒に関する名前です。

十字軍に参加するロマネは、聖戦という名目とは別に、父親であるブルゴーニュの荘園領主の父親からブドウの樹を持ち帰ってくるという使命をさずけられます。そこでロマネは友人たち2人と一緒に騎士として参加、隠れキリシタンが密かにワインを醸造する、トルコ・カッパドキア「月の谷間」をみつけてブドウの樹を無事に持ち帰るという話です。 その間に恋あり、ワインのもたらす奇跡があり、悪ものとの戦いあり・・といった盛りだくさんの内容の冒険小説。

イスラム教徒に気づかれないよう、ギリシャ人たちの夜明け前の葡萄摘みや地下醸造所のワイン造りを行う場面などは、宗教的な違いを改めて思います。また、スルタン宮での詩の朗読会やトルコ人村の結婚式の様子など、トルコの生活を感じさせてくれる記述も、話を飽きさせずに読み進めさせてくれる要素になっています。著者は、若い頃、イスラエルに遊学し、中東をよく知っているらしく、そのへんが通常、ヨーロッパサイドからしかワインをとらえない私たちには新鮮に感じられます。

このお話のベースは、著者が夕食時に小学生の息子さんに話した聖母マリアのブドウを巡る十字軍騎士の物語を冒険小説に編み上げたもの、と著者略歴に書かれていますが、そのお話の才能には感服します。まるで千夜一夜物語のごとく、お話が次々と沸いてくるのでしょうか。

調香師の手帖 香りの世界をさぐる (朝日文庫)

出版社

朝日文庫

出版日

2008年12月

著者

中村 祥二

定価

800円(税別)

アマゾンで購入できます

ワインを評価する際、その70%は香りにある、といいます。香りはワインを評価する上で知っておかねばならない非常に大切な分野ですが、そんなテーマを中心にした本というのは、あまり見かけません。最近でこそ、香りを科学する、というテーマの本も出てはいますが、いまいち、面白くない(すいません)。今回、ご紹介する本は、化粧品会社の研究室に長年、在籍し、香りの研究・調合などを手がけてきた著者の日常を含め、感じられる本です。

この本の内容は濃いです。自宅にツンドク状態になっていましたが、もっと早く読んでおくべきだった。 単に私の知識が足りないからだけかもしれませんが、香りについて、知らなかったことがたくさんあります。そして身近にある香りの違いに目をむけさせてくれます。例えば、香りの王者と思われるバラも、近年では香りが弱くなっていることや、桜といっても品種によって香りの強いもの、弱いものがあること。「香り桜」と呼ばれる桜があることをはじめてしりました。この本を読むと、花見も見るだけでなく、嗅ぐ、という別の楽しみ方を知ることができます。

ワイン通の嫌な面としてよく取り上げられるウンチクも豊富です。中国には、香妃と呼ばれる美女がおり、体からえもいわれぬ芳香を放っていたというエピソード、そしてその香りを再現すべく、「SASO」という香水が生まれたという話をはじめとした数々の香水にまつわるエピソードなど。

著者は研究者なので、学問的、専門的なアプローチと著者の日常における香りの楽しみ方などもうまくブレンドされていて、文庫本にしては太いですが、結構、飽きずに読めます。この本は1989年に初版がでており、2008年にタイトルを変更して文庫本として復活しています。著者は、「この本を読んで調香師になろう、と思った、という若い人に出会う」と書かれているので、調香の世界では、有名な本のようです。この本を読むと、ワイン好きたるもの、もっと嗅覚を鍛えないといけない、と感じさせてくれますので、ぜひ、皆様もご一読ください。

ワインと外交 (新潮新書)

出版社

新潮新書

出版日

2007年1月

著者

西川 恵

定価

700円(税別)

アマゾンで購入できます

外交の場にワインや食事がどうかかわっているか。なかなか興味深いテーマです。この本の前身といえる『エリゼ宮の食卓』という本はまさに、ヨーロッパの饗宴外交のありかたを解説してくれた名著でしたが、これはその現代版。

前作『エリゼ宮の食卓』では、ワイン・コレクターとしても知られたミッテラン大統領の時代を中心に書かれていたので、ワイン選びひとつをとっても、相手国との関係、相手国トップとの個人的な親密度の違い、政治的な思惑の違い、などにワインが大活躍していたことが実感できましたが、今のサルコジ大統領は下戸、ブッシュ元大統領も禁酒をとおしていましたから、ワインの出番は少なくなっているように感じます。しかし、食事に何を出すか、どういうワインを出すか、などやはりヨーロッパの饗宴外交は続いていると実感させられる面白い本です。

例えば、安倍首相と小泉首相では、どちらが重要視されたか、というのを料理の内容やシチュエーションで解説しているのは面白いですし、中国外交に対してどういうふうに料理を出しているのか、というのも日本人としては興味のあるところ。外交の裏話もちりばめられていて、国際政治に少しでも興味あれば、読んでおいて損はないと思います。

ちなみに、私はこの本を読んでいたので、先日2011年5月にオバマ大統領がイギリスを訪問した時の皇室の歓待ぶりを食の面から実感することができました。最初のスパークリングこそ宣伝も兼ねて、イギリス産のリッジヴュー・スパークリングでしたが、ウィリアム・フェーヴル・シャブリ・レ・クロ2004年、ロマネ・コンティ・エシェゾー1990、ヴーヴ・クリコ2002、最後はロイヤル・オポルト・ヴィンテージ・ポート1963、と異例ともいえるワインが供され、驚きました。ロマネ・コンティのエシェゾーは、どんな国のトップであっても、なかなか出てくるアイテムではありません。イギリスが英米同盟の重要性やオバマ大統領に対する敬意を十分にあらわしている結果でしょう。

エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交 (新潮文庫)

出版社

新潮新書

出版日

1996年8月

著者

西川 恵

中古価格

200円ぐらいから

アマゾンでこちらから購入できます

この本は1996年に書かれた本で、非常に仔細にヨーロッパの皇室や大統領主催の晩餐会などで供される食事やワインが外交にどのようにかかわっているかを解説した名著です。

ワイン・コレクターでもあったミッテラン大統領時代、フランスのワイン支出も増大します。また、ミッテラン大統領の素顔や日本通だった様子など、外交以外の面にも触れられています。さらに、その料理を扱う裏方のシェフやソムリエといった人たちにも話をきき、彼らがどういうふうに膨大な料理をマネージし、そしてワイン選びを行っているかなど、興味深いエピソードなどがつづられていて、今となっては時代背景は少し古いですが、読んでいただきたい本です。

酒道入門

出版社

角川oneテーマ21

出版日

2008年12月

著者

島田雅彦

定価

705円(税別)

アマゾンで購入できます

ワインの本という範疇ではありませんが、広く酒を愛する人に愛読されてもいい本だと思いましたので、ここに紹介します。

著者は小説家である島田雅彦氏。純文学・・・という言葉を聞かなくなって久しい気がしますが、若くしてデビューした彼は、ある時期、『最後の純文学者』、と言われていたように記憶しています。今では純文学というジャンル自体曖昧ですし、そんなこと、気にする人はいなくなったのか・・・。

それはさておき、昔から、純文学者たるもの、大酒をくらい、酒を語り、粋に夜遊びをする、というイメージがありますが、そんなイメージにぴったりなのが島田氏です。結構、見た目もいいので、若い頃はもてたようです。今もかな?

内容は、『酒とどうつきあうか』がテーマ。著者の経験、生活、人生観がそこにちりばめられていて、多少の薀蓄もありつつ、しかし著者がいかに楽しんでお酒を飲んでいるのかがひしひしと伝わってきます。実は読むまでは、あまり期待していなかったのですが、やはり文学者らしく、読ませる文章が飽きさせないので、結局最後まで読んでしまいました。これを読むと、やっぱり酒のない人生なんてつまらないね、と思ってしまいます。

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン

出版社

白水社

翻訳出版日

2010年9月

著者/訳者

ポール・トーディ/小竹由美子

定価

2,600円

アマゾンで購入できます

イギリスの作家、ポール・トーディのデビュー2作目となる本で、小説です。ポール・トーディは59歳で処女作「イエメンで鮭釣りを」という本を発表してたちまちベストセラー作家となった遅咲きの小説家です。

真面目に働く天才プログラマーの主人公は、事業に成功し、金持ちとなります。そして、ある日、ふと立ち寄ったワインショップ。そしてワインを愛してやまないオーナーとの交際を始め、ワインの深遠な世界に堕ちていくという内容。彼は結局、アル中になり、破滅するのですが、身につまされる内容です。

2010年8月に翻訳本が出版されていますが、2010年年末の(確か読売新聞)の新聞の書評欄でもどなたかが、『今年の3冊』としてこの本の名前を挙げられていました。その方のコメントでは「主人公は、結局、幸せだったのではないか、と思えるのが味噌」と述べられていましたが、うーん、確かにそうかもしれません。訳者あとがきでは、「(この二作目の結末は)とことん暗く悲惨で救いがない。ところがそんな陰鬱な物語が、実に面白く読めるブラックコメディに仕上がっている。ピリッと辛味の効いたユーモラスなタッチで快活に進行(逆行?)し、最後は晴れやかな希望の光に満ちて終わるのだ」というコメントをしています。

そうなのです。とにかく引き込まれるストーリー展開です。といっても結論が最後で、その理由が徐々に、ワインのヴィンテージとともにあきらかになっていく手法、そのわかっているようでも読ませるテクニックは小説家としての力量が素晴らしい、と感じます。ことさらワインの細部に立ち入ることなく、あくまでもワインの描写は小説の筋を際立たせる脇役ですが、適切で、この作者はかなりワインを飲みこなしてると感じさせます。(イギリス人の見栄でしょうか、こんな高いワインはほとんど飲まないよ、と言っているらしいですが、ワインの表現を見ていれば、それは単なる本からの受け売りではないのはわかります)。

この本は最後まで読んでいただきたいですね。最後(まさに主人公がワインにはまり始める頃ですが、その中で「ワインを愛することの罪深さ」に触れられている部分があります。ワインを愛することは、人生を豊かにするのか、堕落への一歩なのか・・・それは読む人の一人ひとりにかかっています。

「The World Atlas of Wine」

出版社

Michell Beazley(イギリスの有名出版社です)

出版日

2001年9月

著者

ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン

定価

6859円 (35ポンド)

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イギリスの超有名ワインライターであるヒュー・ジョンソンのライフワークです。この第5版より、やはり超有名ワインライターであるジャンシス・ロビンソンとの共著となりました。ヒュー・ジョンソンも高齢になってきたので、自分の後をジャンシスに託すということなのでしょう。

それはさておき、この本は、次に紹介するジャンシス・ロビンソンの「The Oxford Companion to Wine」と同様、ワイン通となるためには、座右の銘として手元に置いておく必要のあるものでしょう。世界各国のワイン産地のデータが地図とともにわかりやすく、膨大にまとめられており、非常に役に立ちます。あまり知られていないウクライナ、ルーマニアなどのワイン産地の歴史、最近話題のイスラエルとレバノンのワイン造りの現状など、マイナーな産地についてもわかります。日本についての記述は、わずか1ページですが、しかしアジアのワインとして1ページ、日本のワインとして1ページが割かれていることから考えると、それなりに大きな扱いだと言えるでしょう。

原書は苦手、という方には日本語版があります。こちらは「地図で見る世界のワイン」というタイトルになっています。ただ日本語版は、目次を見る限りページ数が全く同じです。ということは完全な翻訳ではなく、内容を省略している部分もあると思われます。監修は、ワイン本の翻訳にかけては右に出る方はいないと思われる山本博先生ですから、内容的には問題ないと思いますが、金額的にも倍ほどの値段になることを考えると、できれば原書を買われることをお薦めします。

「The Oxford Companion to Wine 2nd Edition」

出版社

Oxford University Press

出版日

1999年12月

著者

ジャンシス・ロビンソン

価格

14,868円

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ワインの辞書という位置づけの本です。こちらはジャンシス・ロビンソンのライフワーク。彼女の知識の深さをうかがわせる本です。「これを作るにはかなりの時間と労力が要した」、と発言しているのをどこかで読んだことがあります。

厚さはなんと6.5センチ。本を開くだけで「よっこらしょ」という感じですが、中身は濃いです。単なる単語の解説にとどまらず、歴史や言葉の由来、政治的な背景、最近の流行までも場合によっては説明している、それだけで読み物ともなる辞書です。

例えば、"Oak"の意味を引いてみると、「ワインの貯蔵、熟成に使われる樽の木の種類である」というところから始まり、オークの種類の違い、それによる味わいの違い、各地の生産量の表、「アメリカン・オーク」の定義や歴史、「ヨーロッパのオーク」の産地の詳細、「樽で熟成させることの意義」さらには「ブランデーでのオークの使用」、「オーク・チップの問題」など、小さい文字にもかかわらず、4ページも割かれています。

また、例えば、「エノテカ」という単語に興味を持ったとします(日本でもワインショップの名前として使われています)。これについては、「イタリアで、比較的高級なワインを扱うワインショップのこと。カジュアルなワインを扱う"bottiglieria"や酒屋兼飲み屋を兼ねる"vinaio"と対比される言葉」と説明されています。そして「多くのエノテカでは、テースティングもできるようになっており、またおつまみもでる場合がある。おつまみ程度から本格的な料理までその店によって異なる。特定の地域のワインを扱うエノテカは、DOCシステムができたころから出てきており、古代ギリシャ語でイタリアを意味する"Oenotria"と"Library"を意味する"theke"から来ている」。ワインに関してわからないことはない、という感じです。

この一冊は、ワイン通のインテリア・アイテムとしても映えます。しかし嵩張るのも事実。実は、ジャンシス・ロビンソンのホームページで会費(1年間69ポンド、約6000円)を払って会員登録すれば、オンラインで検索ができるますよ(ジャンシスのホームページ開設1年間は無料だったのですが・・)。高いですね。残念ながらこの本の日本語版はありません。あまりに膨大であるため、彼女の代表作といえども翻訳はされないようです。

「ほんとうのワインー自然なワイン造り再発見」

出版社

白水社

出版日

2004年6月

著者

パトリック・マシューズ

訳者

立花 峰夫

定価

2,600円

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ワイン生産者や、業界専従者のみならず、ワインをもっと深く知りたい、本質を知りたいと考えている消費者にとっても重要な一冊です。

プロ・アマ問わず、ワインのことを知っていると思っている人々にとって、この本の深さに出会うとショッキングでさえあります。いかに表層しか知らなかったかと思わせるはず。 訳者あとがきに「『ほんとうのワイン』は奇妙な本である。歴史あるイギリスのワインジャーナリズムの系譜に連なる一冊ではあるものの、 先行するどの書物にも似ていない。ワインブックの基本属性がジャンルを問わず、「退屈」となってしまった今日において、 『ほんとうのワイン』ほどに読ませる作品はなかなか例がない」と書かれています。

確かに、その通りだと思います。アメリカ人たちの偉大なワイン造りに対する情熱や挑戦を紹介しながらも、 視点は「自然なワイン造り」という永久不滅なテーマに据えられているからです。

本書の構成もわかりやすいものとなっています。「ワインを造る」という立場から、 「場所を探す、ブドウの樹を植える、ブドウの樹を調達する、ブドウを育てる、ワインを熟成させる、ワインの欠陥に対処する」 という流れに沿って書かれている。この辺の構成などは、拙訳「ロマネ・コンティに挑む〜カレラ・ワイナリーの物語」にも似ています。 それを、よりグローバルかつ知的にしているといった趣の本です。

DVD「サイドウェイ」

監督

アレクサンダー・ペイン

発売日

2006年1月

原作

レックス・ピケット

出演

ポール・ジアマッティ、ヴァージニア・マドセン

定価

896円

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数あるワインテーマものの映画の中で出色。ワイン好きなら抑えておきたい映画です。

ストーリーは、中年にさしかかったうだつのあがらない平凡な国語教師(でも自分の小説を出版したいという野心を抱いている)が、結婚を控えた親友と一緒に旅に出る。ワイン好きの彼が選んだ旅先は、「貧乏人のナパ」というサンタ・バーバラ地区。理由はそれだけではなく、なにより、彼はピノ・ノワール好きなのだ。そのピノ・ノワール贔屓、およびメルロー嫌悪のセリフのせいで、アメリカのワイン売り上げは一挙にピノ・ノワールに傾いたといういわくつきの映画。当初は、あまりヒットしないと思われていましたが、封切られてみると、地味だがその素朴な味わいでロングランを続け、アカデミー賞脚本賞をゲットしたのです。

バリックヴィルの翻訳本

ここではバリックヴィルで翻訳した本をご紹介しています。

「カリフォルニアワイン物語 ナパ〜モンダヴィからコッポラまで〜」

出版社

JTB出版

出版日

2001年10月

著者

ジェームズ・コナウェイ

訳者

松元寛樹/作田直子

定価

1,785円

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著者は、ワシントン・ポストの記者兼コラムニストとして活躍し、ナショナル・ジオグラフィックをはじめとする雑誌に数多く執筆するジャーナリスト。 この本は、多くの資料と緻密なインタビューによって、登場人物が非常に生き生きと描かれています。

原書のタイトルは「NAPA The Story of the American Eden」で、出版から10年以上たってもロングセラーを続けており、 ナパのワイン関係者ならおそらく、みな、読んだことがあると思われるほど有名です。

ちなみに、2002年に続編ともいえる「The Far Side of EDEN」が出版されました(日本語版はありません)。 こちらも前作同様に、登場人物がかなり精緻に描かれていますが、ワインバブルを背景に、ナパに押し寄せた人たちの豪奢なライフスタイルや価値観、 ブドウ畑開発の環境破壊などに対して批判的な色彩が強く、ワイン業界の人間にはとても受けが悪かった問題作です。著者はナパで講演を行う予定をもっていましたが、 会場のボイコットにあったりし、キャンセルが続出しました。

「ロマネ・コンティに挑む〜カレラ・ワイナリーの物語」

出版社

TBSブリタニカ

出版日

2000年4月

著者

マルク・ド・ヴィリエ

訳者

松元寛樹/作田直子

定価

2,100円

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カレラ・ジェンセンという一本のワインに感動した著者が、ワインが出来るまでの軌跡をたどることで、カレラ・ワイナリーの歴史、 ワイナリーのオーナーであるジョシュ・ジェンセンのワイン造り、ワインビジネスにかける思いを読者とともに体験するという形式をとっています。

初心者である著者の素朴な質問に対して丁寧に応えられ、初心者にもわかりやすい内容になっているとともに、 ワイン造りのかなり細かな点にまで踏み込んでいるので、中級者にとっても興味のあるものとなっています。どちらかというとフランスびいきのオーナーが、 アメリカ的やりかたに批判的で、アメリカ式ワイン造りの問題点なども提起されているところがアメリカ事情を知る上で有効でしょう。

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