Topics & Columns(2006年12月)

1960年

シャトー・ディケムの値段

正確には、1860年物から2003年ものまでのシャトー・ディケム135本の値段です。150 百万USドルでした。日本円で180億円。

以前もこのニュースで紹介したことがあるアンティーク・ワイン・カンパニーが、現在匿名の買い手に販売しました。2007年1月にワインを届け終わったあとで名前を公表するとのこと。シャトー・ディケムにさえ、すべてのビンテージはないとのことで、日本を含む世界中のコレクターの関心を集めていたそうです。

1860年といえば、1853年のペリー来航による鎖国崩壊のあと、桜田門外の変、横浜ホテル開業、勝海舟の咸臨丸による渡航開始があった年、まさに西郷、坂本、大久保が活躍を始める幕末、新撰組設立前の時代・・・

今からたったの150年前というか、150年の間にいろいろなことがあるというか・・・1860年物のワインをあけるときに人は何を語るのでしょうか?

あなたはスーパーテースター?

味覚に敏感な人とそうでない人がいるのは、経験的に知られていますが、では、ワインテースターとしては敏感な方がいいのでしょうか?――そうとも言えるし、そうではないとも言えます。

一般に、舌にある味蕾の数が多いほど、味覚は敏感だとされています。人の4分の1が味覚が敏感なグループで、半分が普通、残りの4分の1が鈍感なグループに属するそうです。敏感な人は、酸味や渋み、アルコール度を通常よりも強く感じてしまい、そういったワインを美味しいと感じないそうです。そういう意味では、人に美味しいワインを勧めるのが仕事であるテースターとしては、一般人と同じ感覚を持っていたほうがいい、とも言えます。しかし、人よりも優れた味覚知見の能力を兼ね備えていたほうが、未知の世界に導けるという意味ではテースターに向いているのかもしれません。

今年の夏にナパで行われたマスターズ・オブ・ワインのシンポジウムにて、これをテーマにしたセミナーが行われ、その会場にいた人たちは、自分がスーパーなのか、普通なのか、鈍感なのか、というテストをしたそうです。テストに際してはPROP(6-n-propylthiouracil)という処方箋が必要な薬品をつかったそうですが、自分でも簡単に試す方法もあるそうです。それは、舌に食紅を塗り、プラスティック製のリング・バインダー(ファイル)に舌を押し付け、スポット25個以上あれば敏感なのだそうです。

ちなみに女性のほうが味覚は鋭い、ということのようです。研究によると(白人の場合)、女性の35%がスーパーテースターであり、男性では15%に過ぎませんでした。白人とアジア人を比べると、アジア人の方がスーパーテースターの割合が多いようです。

アジア人の女性の皆さん!スーパーテースターである確率は高いですね。

一度、試してみてはいかがでしょうか。

受容体数の理論の間違い

先週、「味の受容体」の数の話をしました(上記「あなたはスーパーテースター?」)。先週はとりあえずニュースとしてお伝えしましたが、実は間抜けな論理です。

多ければテイスターとして能力が高い?ワイン業界には非常識的な話が多いですが、ここにも常識を欠いた理屈があります。「数が多いことが、物事の質を決める」といっているわけですから、おかしな話です。

『受容体が多いほうが、味を診る能力が高い』ということは、『頭が大きい人が頭が良い』といっているようなものです。そんなことはないのは誰でもわかります。

人間は動物ですから、先天的に「苦味を毒」かも知れないと感じる能力、あるいは「甘いものはエネルギー源」と感じる能力はありますが、それ以外のさまざまな味わいを判別するというのは後天的なものです。経験と知識が大きいのです。

では逆から考えてみると、経験と知識があれば、受容体が増えるか?そんなことはありません。肉体的なものは整形でもしない限りは変えることは出来ないのです。受容体を増やすという整形をやった人がいるか?そんなものはいません。

だから先週のニュースにもありましたように、『アジア人の女性がテイスティング能力が高い』というのはきわめて肉体的先天性、すなわちポテンシャルについて触れたものであって、経験と知識によって発達し、獲得するテイスティングの能力とはまったく関係がありません。

ということで私の意見を念のため述べさせてもらいましたが、次に面白い報告がちょうど出てきましたのでご紹介します。

口はともかく、鼻はどうか?

 

ノースウエスタン大学から、面白い調査データが出てきました。鼻か口かの違いを除くと(大きな違いではあります)前出の私(アシュエム)の理論を裏付けてくれるものです。

被験者を2つのグループに分け、一つのグループにミントの香り、別のグループにはある花(内容不詳)の香りをそれぞれ3分半、,嗅いでもらいました。そうすると、最初のグループは、以後24時間にわたり、他のハーブとの香りを区別できたし、2つ目のグループは他の花の香りとの区別が出来るということです。

調査チームはMRIを使って脳の活動をチェックしたようですが、3分半嗅いでいたハーブや花の香りをもってくると、嗅覚や感情やモチベーションをつかさどる眼窩前頭皮質(前頭葉の基底面をおおう大脳皮質)の部分が活発に反応するということが確認できたといいます。

調査を担当したジェイ・ゴットフリードは、「香り情報は、眼窩前頭皮質部分では安定的ではないですが、神経可塑性があります」という結論のようです。神経可塑性というのは、脳の中の獲得形質です。つまり「身に付く」ということです。

これは経験と、その経験を概念化するための知識でのみテイスティング能力は発達するということを裏付けるものです。あなたは、どう思いますか?

フランスの苦悩は続く

正確にはフランスワイン業界の苦悩は続くということになりますが・・・フランスは90年代の景気でかなり植樹をしました。これは、フランスに限ったことではなく、全世界的にそうでした−アメリカ、オーストラリア、チリ、ニュージランド、中国、インドもそうでした。

しかし消費市場を考えてみると、そうそう大きくはならない。もっとも成長した市場は中国、インド、ロシアらしいですが、それも一般的に広まったわけではなく、市場をごく一部だけ占めるハイエンドの市場が広まったわけです。それもそのはずで、これらの中国、インド、ロシアは高級外車を買える人がワインを飲み始めたに過ぎないのですから。

ハイエンド市場で売れるワインとはブランド名を持つワインばかりですから、木を植えてすぐにできるような名のないワインには目もくれません。「シンデレラ」と呼ばれる最初から高値で取引されるワインがあるのは事実ですが、5本の指で数えられるかどうかという程度しかありません。

ローエンド市場で売れるワインということになると、価格は安い。コストを抑えつつ、かつ薄利多売でやっていかなければ利益が出ない・・・しかし、そんな効率のよいシステムはフランスにはありません。アメリカのローエンド市場で研鑽を積んだガロがフランスに進出して作ったブランド「ビシクレット」が成功するのですから、フランスワイン業界の問題は構造的な問題です。

以前ここのニュースでお伝えしましたが、ボルドーでは一昨年来から約15,000ヘクタールの栽培面積を減らすための減反政策を導入しました。ヘクタールあたりの減反に対して、15,000ユーロを支払うというものでした。

2年後の結果は、たったの2000ヘクタールの申し込みしかありませんでした。全滅への道をたどっています。とは言え、ボルドーはだめでも、ラングドックは、アペラシオンの簡素化の道を独自で探っていますので、ひょっとすると生き残るのかも知れません。しかしこれも一重に経営努力と販路開拓にかかっています。

ワインにあうシガー

南アフリカのワイナリーが高級ワインに合うシガー(葉巻)を売り出しました。

アメリカで「シミ」のCEOまで上り詰めたゼルマ・ロング女史がコンサルタントを努める南アのワイナリー、ヴィラフォンテのオーナーであるラトクリフ氏は、個人的に葉巻が好きなのだそうですが、彼によると「ほとんどの葉巻はコニャックと合わせることを想定していて高級赤ワインにはあわないのが不満だったとのこと。葉巻の香りが強すぎて赤ワインの繊細なる香りを殺してしまうのだそうです。そこでゼルマ・ロング氏の協力のもと、ワインに合う葉巻というキャッチフレーズの葉巻「シリーズX」をリリースしました。

繊細な味わいに仕上げるために、キューバ産のシード(葉っぱでしょうか)をオーナー好みにブレンドし、スマトラ産のラッパー(葉っぱを巻いているもの)で包んだものだそうです。

葉巻についての知識は皆無なので、あまり興味はないのですが、ワイン好きの皆様は結構、葉巻も吸う人がいるようで、原宿の「シャルドネ」というワインバー?は、以前と変わっていなければワインバーとシガーバーを併設していました。すぐにつぶれるか、と思いましたが(すいません!)、もう10年近くあるところをみるとやはり需要はあるのでしょうね。そういえば、葉山孝太郎さんのエッセイにもシガーについて書かれたものがありました。

一度、お試しください。

メダルをめぐるスキャンダル

ニュージーランドのトップブランドの一つ、日本にも輸入されている「Wither Hills」がメダル獲得のために行っていたとされる行為が問題になっています。

先日、ウィザー・ヒルズのチーフ・ワインメーカーであるブレント・マリス氏がエア・ニュージーランド・ワイン賞の審査員長を辞任しました。

事の発覚は、ニュージーランドのグルメ雑誌である「Cruse」の審査員の一人が、エントリーされて提出されたワインの味わいと一般に売られているワインの味わいが大幅に異なるという指摘をしたことでした。早速、アルコール度数、糖度、酸度などが科学者によって検証されましたが、結果は、「全く違うもの」。結局、最終的にブレンドされたワインの2%にあたるものがワイン賞に提出したのであるとわかりました。

しかし、驚くべきは、これは「不正」にはあたらない、ということなんです!!

ワイン賞に提出されるボトルに使われていればオーケーというルールになっているようですが、この基準は甘すぎるとして、業界では批判が相次いでいます。「メダルの信頼性」そのものが揺らいでいます。

消費者からすれば、2%しか含まれていない部分をもって、金賞だ!と言われているわけですから納得はいきません。結局、何を頼りにしていいのやら・・・。

小学校でワイン教育

さすが、ワインの国フランスです!!。小学校からワイン教育をしようという構想が与党で検討されているそうです。

イギリスの有力紙【ガーディアン】の調査結果では、25歳以下のフランス人のなんと90%はワインを飲まないという衝撃の結果がでています。フランスのワイン消費は1980年時点と比べてなんと45%も減少しているのは、こういった社会的な嗜好の変化があると思われます。

「ワイン産業はフランスの大切な宝」ということで、子供のときからワインの魅力を叩き込もう!という作戦をとる方向で与党では検討されており、業界はもちろん大喜びです。ワイン業界に対する補助金を少しでも減らしたい、という苦肉の策でもあります。あるワイン商は、「うちでは父親は、いつもワイン入りの水を飲ませてくれた。単なる水というのは体に悪いと思っていたようだ」と語っています。そういえば、ロバート・モンダヴィも子供の頃から水を飲むときにはワインを少し入れていたそうです。理由は「水は味がしない」から。

水の悪いヨーロッパでは、確かにそういう風習があったようですが、それゆえアルコール中毒が多いと社会問題化したはず・・・。なんだか時代逆行にも思えます。

日本でも消費者の米離れ、日本酒の低迷もあります。でも小学校で日本酒の価値を大々的に教え込んで将来の消費の基礎にしよう!と言いだしたらぶっ飛ばされそうです。やはり「ワインは文化」という捉え方の強いフランスならではの発想だと思います。

チャールズ皇太子も

ワインラベルアーティストに

毎年、現代アーティストによるラベルが話題のムートンですが、2004年のヴィンテージは、なんとイギリスのチャールズ皇太子が描いたものです。

チャールズ皇太子は、田舎の風景を描く水彩画を得意としていることで有名で、今回の絵はムートンのために特別に描かれたものでないにしろ、バロンヌ・フィリップ・ロッチルド女史が自ら選んだというもの。フランスとイギリスの「英仏協商」100周年を記念してささげられるラベルということです。

「英仏協商」とは、長らく続いた中東やアフリカでの英仏の植民地政策の対立に終止符をうち、とりあえず仲良くやっていこうという内容の協定でした。その後、ロシアとフランス、ロシアとイギリスの間にも同盟関係ができて、「三国協商」という名前で世界史の本にも出てきたかもしれません。それほど大きな出来事でありました。この協定締結に心血を注いだのは、イギリスの皇太子であった後のエドワード7世。それから100周年を祝うにあたり、チャールズ皇太子が役割を担うということは、すごいことだと思います。

歴史的講釈はこれぐらいにしても、現実的には2004年のムートンが80ポンド(約16000円)でリリースを開始したばかりです。絵自体はさほど魅力的ではないですが、話題性という面では買っておいて損はないかな、と思いますね。

犬用のビールと写真集

なにかと愛犬家が増えている世の中です。「犬にもビール」という流れはとても自然なことなのかもしれません。

ナパに住むミラー夫妻が、愛犬である秋田犬のコディちゃんのために、誕生日プレゼントとして開発したビールがあります。コディちゃんは、いつも尻尾を振ってビールを欲しがっていたためで、その名も「ハッピー・テール・エール」。モルトと麦芽から造られた本格的なノン・アルコールビールで、牛肉のフレーバーとビタミンを含んでいます。ある意味、人間のノン・アルコール・ビールよりも手が込んでるかもしれません。

現在、年間200ケースほどの生産量ですが、ビール好きの日本でも受けるんじゃないかと思いますね。シュワルツネガー知事も今年の初めにナパに視察に来た際には6本入りの「ハッピー・テール・エール」を買っていったそうです。

ビールのついでに本の話題も。

最近「ブドウ畑のイヌたち」(原題:Wine Dogs USA edition)という写真集がアメリカで発売されました。ブドウ畑には、鳥対策のためもあって、イヌが結構いるのですが、そんなイヌたちの姿をひたすらとり続けた写真集です。その数なんと450匹。犬好きの人ならいつまで眺めていても飽きないそうです。

ご意見、質問、要望、苦情は、hm@barriqueville.comまで。