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Topics&Columns(2004年1月26日)

 

バリックヴィルの2004年第2号です。気がついたら丸々4年間やっています。

コルクが原因でないコルク臭

1月20日付デカンターから。TCA=トリクロロアニソルという物質はコルク臭の原因として知られるようになりましたが・・・

要約:
ボルドーの研究者はコルク臭の原因は必ずしもコルクだけではない事を発表した。

これまでTCA、TeCAと表記されるクロロアニソル類と呼ばれる物質がワインに混入している場合、不快なコルク臭をもたらすと知られていたが新たな研究ではTBAも同様にワインを汚染する。醸造学者のパスカル・シャトン氏とそのチーム、エクセル・ラボが発見したものである。

分光器とガスクロマトグラフィーを使いこなし、TBA(2.4.6トリブロモアニソル)がTCAと同じように作用するということがわかった。研究そのものは数年かかったが、同様にTBAがワイン醸造工程、保存、熟成の過程でも生成しうるということもわかった。

TBAは4ナノグラム/リットル(ppb)という低い濃度でもコルク臭がワインについてしまう。テイスターによっては、さらに低い濃度でも感知しうる。余韻の中にそのにおいを残す事もしばしばである。

コルクがTCAをワインにつけてしまうという事は良く知られているが、実はTCAは殺虫剤の生分解過程で生成されたり、ワイナリーの掃除に使った漂白剤が原因だったり、その他にも環境が汚染されていればTCA汚染を引き起こすものである。TBA汚染は、同様にワイナリーの環境で引き起こされる。タル、プラスチック、コルクなど汚染を受けやすい。広く使われる火炎抑制剤(?)はTBAを生成する。さらに古い木造施設もTBAを発する。仮に汚染源が取り除かれた後でも、汚染物質を吸収してしまった後の建物ではワインの保存にはふさわしくないのである。詳細はJounal of Agricultural and Food Chemistryに掲載されている。
要約終わり:

この文章は、単に「コルク臭(みたいな臭い)を発生する物質はTCAだけではない。汚染源はコルクだけではない」というように読むべきです。あとちょっと誤解しがちかなと思うのは、コルクからついたものでなければコルク臭ではないというように定義するべきではないでしょうかね。原因を究明してその元凶をつぶしていくためには同じ呼びかたではダメでしょう。実際、「クロロ=塩素」「ブロモ=臭素」でそもそもが違う。

コルク臭についてはずいぶん前に、かなり長く書いた事があります。事実というよりもエッセイです。TCAがコルクだけによるものでない事はずいぶん前からわかってはいたことです。ご興味ある方は・・・http://www.barriqueville.com/CorkStory.htmをどうぞ。(H)

遺伝子組み換えに反対する

業界の方でもご存知の方はあまり多くないと思いますが、カリフォルニア州メンドシーノというワイン産地は実はオーガニックの生産者が多い地区です。そこでオーガニックとGMO(Genetically Modified Oraganisms=遺伝子組換生物)については非常に議論が盛んな場所です。ここではカウンティ内で、GMO植物、動物を禁止しようという「メジャーH」と呼ばれる発議がなされ、2004年中にこれに対する投票が行われることになっています。このような事を検討するカウンティは全米で初めてであり、メジャーHの投票の行方について、政府、バイオテック会社、ワイナリー、民間など様々な関係者が関与をし、そして感心を払っています。このメジャーHに関しては、http://www.gmofreemendo.com/な記述があります。”YES on MeasureH!”という「メジャーHに賛成しよう」という趣旨のサイトではありますが、きちんと反対意見を載せているところはアメリカらしいですね。そこで1月23日付けのプレス・デモクラットが報じたニュース。

要約:
メンドシーノ最大のワイナリーで、USでも有力なオーガニック栽培者であるフェッツァー・ヴィンヤード社は、メジャーHをサポートすると発表した。これは地元の支持者にとっては大きな力となる。

「フェッツァー社はGMOの議論について全ての答えを用意しているわけではありませんが、長期にわたって、GMO生物が食物連鎖においてどういう影響をもたらすのかが完全に理解されるまで、カウンティ内に持ち込まないというのは適切であると考えています。」とスポークスマンは述べる。支持者たちはフェッツァーの動きに歓喜した。そしてカウンティで最初のオーガニック生産者であるフレイ社は「もっともだと思う」と述べている。

反対者は農政当局、メンドシーノ経営者委員会、そしてメジャーHに反対する市民の会である。この市民の会は、GMO種の最大手生産者であるモンサント社を含むバイオテック会社のロビー活動を行うカリフォルニア植物衛生組合から資金援助を受けている。この団体は、フェッツァー社の動きに対して「驚いています。ピアース病対策の重要な道具をなくしてしまおうというのですから」と述べている。

論争は、21日に政府が、GMO生物が環境や公衆衛生に対して予期しない影響を与えることを100%防ぐ事は困難であると発表した事を受けて激しさを増している。国立科学アカデミーの調査委員会は現在のセーフガードは「開発初期段階であり、どれも不完全」としている。

フェッツァーは1968年に設立され、現在はブラウン・フォアマン社が所有している。2000エーカーの土地を所有し、カリフォルニア最大のオーガニック栽培者であり、世界で最も大きなオーガニック栽培者の一つである。社長のポール・ドーラン氏は「オーガニック栽培というのは、われわれがコミットメントとしてメンドシーノで行ってきたシステムの重要な部分です。GMOはそれを脅かすものなのです」

その他にメジャーHを支持する生産者は、ロデレール・エステート、グラツィアーノ、ハンドレー、ジェリコ、シアーゴ・ワイン・ガーデン、モンタノス、そしてヨークヴィルである。しかし135の生産者のうち、まだ20%しか意見を表明していない。
要約おわり:

日本の生産者の皆さんはいかがでしょうか?免疫力をつけ病気に対抗できるようにするためのオーガニックでもありますからね。(H)

中国料理とのマリアージュ

1月22日付けのサンフランシスコ・ゲイト・オンラインからです。最近シャンパンメーカーもワインメーカーも中国市場におかれるようですが・・・

要約:
サンフランシスコ在住のアルバート・チェン氏は、10年前から友人たちとDai Sik Wui、グルメグループを作っている。参加者はみなワインが好きなのである。

「中国人は食べ物が大好きで、情熱的でさえあります。ワインは上手く合いますし、より食べ物を美味しくします。すばらしい文化の融合ですよ。これまで中国料理にあうのはビールのみとされてきましたが、ワインは決して神秘の飲み物でないという事をアピールしたいのです」という。

チェン氏のグループは、ワインと中国領地のベストのコンビネーションを探し出す事、そして双方を楽しみながら教育していく事を目的にしているが、最初は中国料理とのペアリングを考えたわけではなく、市内の有名レストラン―例えばマサズ、ラ・フォリー、ジャディニエなどで食べ歩いていただけであったが、いつしか中国料理とワインとのペアリングを考えるようになったのだという。「中国料理はすばらしいし、ワインもそう。上手くいかないはずがないでしょう」いつの間にかメンバー全員が自分のセラーを持つまでになっていたのである。

彼らはサンフランシスコの有名レストランを食べ歩いた。そして一通り食べてしまうと、バンクーバーに行った。ここは北米最高の中華料理が食べられる場所だとチェン氏はいう。そして情熱はついに大陸を越えた。彼らは、昨年世界で最高の料理を求め、上海へ飛んだ。一人最低2本づつ、全部で24本のワインを持ち込んだ。

ベスト・ペアリングは、バラかスネのポークのトロトロ煮とグラハムのルビー・ポートだった。ほとんどフォワグラとソーテルヌのペアリングに近いものだ。「それはそれは美味しくてたまらない」そして・・・
・ソーヴィニョン・ブランとガイ・チョイ・サム(ベビー・マスタード)
・シャルドネもしくはシャンパーニュと刺身風ロブスター
・ジンファンデルとローストしたヒナ鳥
・ピノ・ノワールとローストしたダック
・シェナン・ブランと中国ブロッコリー

などは良い組み合わせだったという。「カベルネとはあわせなかったですよ。パワーが強すぎるのでね」という。そして経験則から言えば「最初は白かスパークリングに野菜か海鮮をあわせる。でも重要な事は良いワインを飲むこと。良いワインなら良いフードに合うものです。でも所詮はひとりひとりの趣味ですよ。ルールなどないですよ」と続けた。
要約終わり:

中華料理に赤ワインが合うというのは実は以前から言われていました。かつては高級中華にはブランデーでしたが、ボルドー系の赤ワインが合わせられるようになり、香港や、台湾でも90年代後半のワインブームの時には、高級ワインを買いあさってました。

フードのスケール感からすると中国料理と西洋料理というのは近いですよね。一見大雑把に聞こえるチャン氏のコメントですが「よいフードとよいワインはあう」というのは、大局としては的を得ているのかもしれないですね。ベターなマリアージュをするのは日本人かもしれませんが。(H)

ワイン保存の新サービス

要約:
Vintrust 社は、ワイン保存の新サービスを開始した。ワインの記録をとり、ワインを預けた人々にいつ飲んだら良いかということを知らせるのである。Vintrsut社の倉庫に預けようが、個人宅のセラーであろうがいずれも可能である。Vintrust社のサービスを使えば、居ながらにしてオンラインで自分のワインポートフォリオが管理できるのである。

Vintrsutのサービスはさらにオークションでのワインのピックアップや、様々な場所から場所へのデリバリーも行う。さらにはソムリエを顧客に派遣し、コレクションを分析していつ飲んだら良いかなどをアドバイスする。ソムリエをディナーパーティなどに派遣したりもする。さらには入手困難なワインを探したりもするサービスさえある。

在庫を確認するために、全てのボトルの写真を撮り、バーコードを添付する。そして様々な角度で検索が出来る―タイプ、品種、ボトルサイズなどなど。

価格は、保存のみ:25セント/ボトル、ただし600本以上で10%のディスカウント。写真撮影その他を行うと2.5ドル/ボトル。ソムリエを派遣すると―分析で65ドル/時間人、サービスで100ドル/時間などとなっている。

要約終わり:
要するにワイン保存サービス何でも屋です。パーティ派遣はソムリエを確保するためですよね。すごい。この記事は1月22日付けナパニュースからでした。

ちなみに、ナパで有名な保存サービス会社は55Degreeというのがあります。わたしどもも使っていますが、それよりも料金は安いようですね。保存のみで1ケース6ドルですから、一本50セントです。(H)

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質問、意見、苦情などはhm@barriqueville.comまでお願いします。

追伸:
先週、母親が他界しました。肺ガンでした。皆さん、薬は当てにしないで、体力をつけましょう。免疫力をアップしましょう。