Topics&Columns(2002年8月26日)

人の命を救うシャンパン

オーストリアで15階建てのビルから飛び降りようとしていた人物がシャンパンを飲んで、飛び降るのを思いとどまったという話です。デカンター8月22日が伝えていました。

交渉人が、シャンパンを取り寄せて男にグラスを飲ませて説得に当たった結果です。飲んだシャンパンはXX&YYYYYYとのこと。

そんな安物で思いとどまれるような自殺など人騒がせ以外の何者でもない!と怒ってはいけません。まあそう思う人もいるでしょうが。

『XX&YYYYYYの国際PR部長のジャン・ベルション氏は「人を導くことが出来るというワインの力を証明したものですよ」と述べています。ワイン評論家のトム・スチーブンソンは、チャーチルの言葉を引用して「十分にして勝ち、必要にして負ける」とのべ、「高いワインなりのいい仕事をしたということでしょう」を付け加えました。

シャンパンは、一般のスティルワインと比較すると、より簡単に心地よくなるといわれていますが、2001年サリー大学の調査で、シャンパンはより早く「頭にくる」ということがわかりました。

この調査の結果として、シャンパンの泡がアルコールの吸収を早めるために、酔いが回りやすいということがつきとめられたのです。「一般的には、アルコール量の20%が胃で吸収され、残りは腸で吸収されます。しかし二酸化炭素の影響によって、アルコール分が腸に流れ込むスピードが速まるのです」というのはこの調査を指揮した心理学者フラン・リドー氏です。

実際に男性が飲んだシャンパンは、ドン・ペリニョンだったかどうかはわかっていません。』

との事ですが、ドンペリだったから思いとどまった?レギュラーでも、ドンペリでも、たかだか一万円が関の山であって、そんなものと引き換えに自殺を思いとどまるということは・・・

・・・いずれシャンパン至上主義が訪れ、人の命でさえもシャンパンで取引されるような時代が来た。「あなたの命、XX&YYYYYYのドンペリ・ロゼでいただけませんか?」

いや、この話は、そういうブラックな話ではなくて、ある意味「酔いのもたらす精神的健康、あるいは正常状態」があるということの実例なのだということだと思います。そう考えると、化学的にワインが健康に良いとか悪いといったものでなく、精神衛生上に良いメリットがあ。るつまり、はるかにいい世の中にできる可能性を秘めているのではないでしょうかね?神の存在というか、ディオニソスが、ディオニソスである所以はここにあるような気がしますよね!(H)

イランでのワインはご法度!

中世ペルシャの王子が、病身の王女の死期を早めるためにワインを飲ます・・・やがて王女はなくなり、それを悔やんだ王子も自殺を遂げてしまう・・・

これはイランの作家、ハウシャン・ゴルシリ氏が書いた『エータジェブ王子』という物語。これを舞台作品として演出したアリ・ラフィ氏が「反道徳的な行動をあおった」ということでイラン法廷で有罪となりました。

「ショックです。というのもワインを促進するどころか、ワインを死に結びつけることでワインを非難しようと思ったわけですから・・・」とラフィ氏。このフランスで教育を受けた演出家は、これまでイスラム法に抵触しないように劇場作品を作り続けて来たようです。公衆の面前での男女の接触を禁じるイスラム法の重んじて、「ロメオとジュリエット」ではキスシーンを入れないようにしたのだそう・・・

8月22日ABCニュースがロイター伝で報じたものです。いろいろな国でいろいろな事情がありますよね。しかしキスシーンのない「ロメオとジュリエット」というのは、なかなかイメージしにくいですが・・・手を取り合わないで?ジュリエットのなきがらを抱きかかえないで?どうやってあの劇を演出したのでしょうか?んー興味深いというか。それとも両家の対決をメインにジハードばりの演出をしたのか?

バローロ家とバルバレスコ家の対立というのは面白い?なんだそりゃ?(H)

ランチ・ワインはほどほどに・・・イタリアの食卓

またまたdecanter.comからのニュースです。やはりランチにワインは常識のお国柄、うらやましい限りです。

要約
イタリアのドライバーはランチワインを二杯にとどめておかなくてははならないというEUの基準に対して怒っています。現在の0.8ml/gを、他のEU諸国と同じ血中濃度0.5ml/gに引き下げるという法令が今月はじめに施行されました。

この規制の沿うために生産者がもっとハーフボトルを生産ればいいという提案もありますが、これに対しガイヤは憤慨しました。ガイヤのスポークスマンによると、「法の都合に合わせるためにボトリングの方針を変える気はさらさらない。ハーフボトルは収穫状況による結果であって、それ以外の要因によるものではない」としています。それいに、「どのくらい飲むかということは、個人の問題であるはずだ」ともコメントしました。

ソアヴェの生産者、ロベルト・アンセルミはこう言っています。「新しい基準はイタリアにとってはちょっと厳しい内容です。しかし人々の飲酒の習慣にそれほどの影響は出ないでしょう。ランチの時にフルボトルを頼むと思いますよ。」

確かにイタリアでは新基準が市民の生活に浸透するには時間がかかりそうです。トリノのラ・スタンプ紙は、導入後の最初の一週間で、州内で取り締まられたドライバーは433人に上った、と報じました。

トスカナの有名レストランのシェフであるジョバンニ・トロヴァートは、「イタリア人はアペリティフ(食前酒)とディジェスティブ(食後酒)を減らせばいいんじゃないか」とアドバイスしています。「3杯、4杯のワインといえども3時間の食事と一緒にとれば、体が十分に吸収して分解してくれるということを皆さん認識していません。量より質、が私のモットーです。」

ちなみに、イギリス、ルクセンブルグ、アイルランドはこの規制に対して抵抗しています。

要約終わり

赤ワインが体にいい訳

すでに適度な赤ワインは体にいい」というのは常識ですが、何がどうよくなるのかという研究は日々、いたるところで続けられているようです。先週は「赤ワインがいいのではなく、彼らのライフスタイルがいいのだ」という研究を紹介しましたが、今週は「やはり赤ワインそのものがいい」というものです。なんだか混乱してきますね。

要約
フランスのメディカル・リサーチ・インスティチュートのINSERMは、46名の男性(35歳から65歳まで)を対象に、研究したところ、全く飲まない人、普通に飲む人(一日35グラム以下)、飲兵衛(一日35グラムから60グラム)の人々の間では、HDLコレストロールの値が異なり、心臓血管の疾患に対してプラスに働く作用が強くなっているというデータを示しました。

「この調査によって、はじめて、通常のドリンカーのHDLコレストロールの役割を詳細に明らかになった」とチームのリーダー、ベルトラン・ペレ氏は書いています。

46名の被験者は、飲酒習慣についてのアンケートによって、全く飲まない、普通(一日35グラム以下)、飲兵衛(一日35グラムから60グラム)の3つのカテゴリーに分類されます。これは自己申告です。

そして血液検査によってHDLや他の心臓血管疾患に関連する分析が行われると同時に、栄養状況、喫煙、病歴、運動習慣など、HDLの状態の違いを生み出すと思われるものをできるだけ排除するための分析も行われました。

「HDLの量が増えると同時にHDLの中の不飽和リン脂質、特にオメガ3という脂質性の酸が増える。これが心臓血管の疾患に効果的なのではないか」とペレ氏は話しています。

詳しいドキュメントは、Alcoholism: Clinical and Experimental Researchの8月号に発表されています。

要約終わり

ワイン界のエンロンか?−サウスコープ

ジャスト・ドリンク・ドット・コムが8月20日に伝えた内容からです。

さる四月にグレン・カニンガムというサウスコープの総務部長が、アナリストに対して送ったEメールが引き金となりました。「2002-2003年の予測に対して、2000年の低かった収穫量と、高めの金利負担が反映されていない可能性がある」と警告文を送ったのです。カニンガム氏は、警告文を送った直後に退職しました。

この知らせを受けて、オーストラリア証券投資委員会がサウスコープに対して調査に入ったのですが、その調査結果が近々発表されるとのこと。

カニンガム氏は、覚悟があって警告文を送ったし、社内での追求を恐れて退職したということなのでしょう。しかしキャピタリスト・ピッグたちは、株価の操作のためには、何でもやるのでしょうか?業績で評価されないとなると、将来に対する期待感をあおることに専念する。この資本重視の世の中はなくならないにしても、明確な「誠実性の評価指標」は欲しいです。(H)

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